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塀の中の労働市場

「小泉内閣メールマガジン 第26号 2001/12/13」
が届いた。
創刊半年記念というから、
配信開始されてから、もう半年経つのか。。。
早いものだ。

今や、なんと200万人も読者がいるという
世界一の発行部数を誇るメールマガジンなのだ。
閣僚の本音がかいま見えるのが、
人気の秘訣なのだろう。

これまでは、日本の閣僚が何を考えているかさえ
国民にはわからなかった。
街頭でやっている選挙演説を聴いたり
新聞記事を熟読したりすればいいのだろうが、
これが結構面倒くさいし、そもそも、内容がわかりにくい。

それに比べれば、メールマガジンの手軽さ、わかりやすさ。
政治が身近になったという点では
評価してもいいのかもしれない。

それにしても、私は、
第1号から欠かさずに読んでいるのだが、
大抵はつまらない内容だ。
ところどころに「落ち」を作ってくれるといいのだが、
さすがにそこまでは、行かないようだ。

しかし、たまに、
「おっ、これは面白いぞ」
と感じるネタがあったりするので、
そのネタ欲しさに毎号読んでいるようなものだ。

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さて、「小泉内閣メールマガジン 第26号 2001/12/13」
の中で、面白い記事を見つけたので抜粋して紹介する。

[大臣のほんねとーく 〜 お答えします]

● 塀の中(法務大臣 森山眞弓)

 わが国は刑務所等の行刑施設が70か所余あります。
罪を犯して刑の決まった人を一定期間収容して、
罪を償い、真人間になってもらうための場所です。
私は法務大臣に就任以来、数か所の塀の中を視察しました。

 そこで見聞した最近の問題は次のようなことです。

(中略)

第三に、
受刑者の刑務作業に必要な仕事が
景気低迷の為に減ってきて、
協力企業から仕事を出してもらうのに
どこでも苦労しております。

受刑者にとって作業はいろんな意味で重要で、
その作業による製品は、
値段が安くて質も悪くないと好評なのですが、
単純な手作業による量産品は、
人件費がもっと安い中国や東南アジアなどに発注される、
いわゆる空洞化の為に
刑務所への注文が減りつつあるのです。

これをお読み下さる企業関係の皆さま、
もしお心当たりがありましたら
どうぞ刑務所のご利用をご検討下さい。

(ここまで、抜粋)

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なるほど、
確かに刑務所よりも安い労働力があれば、
企業はそちらに発注するにちがいない。

この不況下だ。
慈善事業だけでは食べていけないからだ。

だが、刑務所への仕事の注文が少ないのは、
不況だけが原因ではない。

刑務所の広報担当者が、
刑務所という労働市場の活用メリットを国内企業に向けて
積極的にアピールしていないからだ。
その為、企業が
刑務所に仕事を発注する、発注できる
ということを思いつかないのだ。

いっそのこと、新聞の全面広告で
日本全国の企業に訴えてもいいし、
そこまでお金をかけられないのなら、
日曜の求人欄のように、
ちいさな囲み求職欄を設けて、
そこで仕事を募集してもいいかもしれない。

また、新聞で特集記事を組んでもらえば、
ただで宣伝することもできる。
このような話題ならば、
新聞側もネタ探しで必死なので
案外とのってくる可能性が高いのではないか。

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刑務作業作業マメ知識:

刑務作業とは、
刑務所における作業のことであり、
刑罰の執行であると同時に、
受刑者に技能を身につけさせ、
勤労意欲を持たせる教育を目的としたもの。
1日平均約4万3千人が就業している。

また、これらの作業を注文している民間企業は、
全国で約1500社にものぼる。

CAPIC(キャピック)とは、
「財団法人 矯正協会 刑務作業協力事業部」
のことであり、
刑務作業に必要な原材料を提供し、
出来上がった製品を販売することにより
国に協力している。

刑務所作業製品とは、
全国74箇所の行刑施設(刑務所、少年刑務所及び拘置所)
において実施されている刑務作業で作成された製品の総称。
なお、刑務所作業製品は、
全国各地で開催されている
矯正展・即売会で買い求めることができる。

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刑務所の刑務作業を利用する方法やメリットが
ホームページに掲載してあった。
とても興味深い内容なので紹介する。

1.刑務作業の利用方法は2種類ある。
(1)機械設備、原材料を持ち込み、
   刑務所の工場、労働力等を利用して製品を作り、
   これに要した労務賃を支払う方法。

(2)財団法人矯正協会刑務作業協力事業部に製品を発注し、
   刑務所で製作したものを購入する方法。

2.刑務作業を利用するメリット
(1)常時一定の労働力が確保できる。
   施設では、通常、一社について
   10〜200人ぐらいの労務を提供している。
   受刑者は規則正しい生活をおくっており、
   作業内容に応じた技能訓練を行っているので、
   常に安定した労働力を確保することができる。

 → 刑務所に受刑者がいなくなるようなことは
   人が不完全な精神動物である限り、絶対にあり得ない。
   従って、刑務所に行けば、労働力が必ず確保できる。
   人手不足とは全く無縁であり、採用コストもかからない。
 → 規則正しい生活、つまり、遅刻やさぼりが無い。

(2)敷地の購入費、工場、倉庫等の建設費が要らない。
   刑務所には工場等の建物が設備されているので、
   機械設備を持ち込んでご利用することが可能
   また土地、建物を維持するための経費、租税が節約できる。

 → 工場を持つ余裕の無い企業には朗報だ。

(3)労務管理の心配がない。
   労務管理は、すべて刑務所の責任で行うので、
   何ら心配はいらない。

 → 労務コストがかからないというのは、
   企業としては、かなり大きなメリットだ。
   労働組合も無いので、
   ストライキやサボタージュも無い。
   派遣ビジネスのような、
   人材のアウトソーシングに近い業態だと言える。

(4)厚生管理費が要らない。
   受刑者については、一般労働者に必要な福利厚生費、
   保険料などがいらない。

 → 一般企業では、福利厚生費、保険料などで、
   給与と同じ位のコストがかかっていると言われる。
   それが不要ということは、
   社員と同じ賃金であっても、
   その賃金と同額のコストを削減できるのだ。

(5)専門の技術指導者が配置されている。
   受刑者は、入所前の職歴、適性、知能程度等を考慮して
   本人に適する作業に配置されている。
   また、受刑者に対する技術指導のため、
   全国で約600名の専門職員が配属されており、
   活発な職業訓練を通じて技術者養成に努めている。

   なお、作業によっては、
   技術指導のため発注者から指導員を派遣することもできる。

 → 専門職員の能力がどれ位高いかはわからないが、
   技術指導員を派遣できるのでカバーできると思われる。

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さて、刑務作業で作成されている製品は
木工・印刷・洋裁・金属・革工・農業・その他・職業訓練
という8つの業種に分類されている。

ほとんどが、製品を「作る」という作業だ。
いわば、第2次産業。
これらの業種では、
既に日本の人件費では採算が合わない。

例えそれが、低コストをうたう刑務所であったとしてもだ。
単純作業では、 東南アジアの低賃金には逆立ちしても敵わない。

だが、単純な手作業ばかりが労働ではない。
より高度かつ日本人でなければ出来ないような作業で、
なおかつ、
人件費をできるだけ抑えたい作業
というのは、実は探せばいくらでもあるのだ。

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現在の日本の失業率、約5%。

だが、世の労働不況とは、
仕事のミスマッチによるところが多い。

製造業は人手が余っている。
一方、IT(情報技術)の特にソフトの分野では
人材がいくらいても足りない
という状況がしばらく続いているのだ。

例えば、受刑者にプログラミング技術を教えて、
プログラムを作らせる。
日本人向けのソフト作りでは、
日本人の思考パターンや文化を熟知していることは大事だ。

欧米のように、
インドやフィリピンに外注すればいい
と割り切る訳にはいかないのだ。

また、プログラミングの作業の多くは、
コーディング(プログラムを書く作業)の後の
バグフィックス(プログラムミスを見つけて直すこと)
に多くの時間を費やす。

この部分だけを刑務所に発注して
第3者の目でチェックさせることによって、
プログラムの開発期間が大幅に短縮できるだろう。
しかも、低コストで。。。
特に、2000年問題のような
単純なチェックかつ膨大な量の作業などには適任だろう。

ソフトのマニュアル作成なども良いだろう。
めまぐるしいほどバージョンアップを続けているソフトウェアの
マニュアル作成ほど緻密で大変な作業は無い。
日本人の特性を知った日本人でなければ、
わかりやすいマニュアルは作れない。
マニュアル作成を通して
他人へのサービス精神、思いやりをはぐくむ
という点でも、刑務作業には最適だ。

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プログラミング以外でも、
治験や臨床試験データの入力作業を発注すると、
案外と重宝するだろう。

治験や臨床試験の場合、
莫大な利益を生む新薬の開発競争が関係してくるので、
そのデータの機密性は非常に高いものが要求される。

だが、刑務所であれば、
外部(塀の外)にデータを持ち出すことは
物理的になかなか難しく、
また、ほぼ完璧な警備も最初から用意されている。
いわゆる産業スパイや情報漏洩の可能性は低くなる。

また、データの内容としては、
医師のコメントなどの文章も多く、
日本語の分かる日本人でないと、
医師の書いた、ミミズがのたくったような悪筆を
解読してパソコンに入力していく作業は困難を極める。

伝票のようなただのデータ入力であれば、
最近は、東南アジアや中国に発注して、
低コストで済ますパンチ業者(入力業者)が多いと聞く。

だが、文章を読んで入力するとなると、
いくら、漢字の読める中国人であっても、
完璧に遂行するのは難しい。

日本の漢字は、中国の漢字とは若干異なる。
ある程度意味はわかるかもしれないが、
治験(臨床試験)のデータにおいては、
「ある程度」という言葉は厳禁だ。

「完璧」に読みとって入力できなければいけない。
人間の命に関わる事なので、
何万分の1の入力ミスも許されないのだ。

そのような、特殊性を考えると、
治験及び臨床試験のデータ入力業務は
まさしく「日本人向き」「日本人限定」の作業と言える。

なおかつ、
「塀の中の労働者」は「塀の外の労働者」よりも
圧倒的に人件費が安く済む。
日本の製薬企業、そして、
製薬企業から治験や臨床試験の業務を受託している
CRO(医薬品開発業務受託機関)のデータ入力担当の方は
是非、「塀の中の労働市場」の積極的活用を
検討してみると良いだろう。

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関連サイト:

財団法人 矯正協会 刑務作業協力事業部
(CAPIC:キャピック)
http://www.capic.or.jp/

刑務所作業製品のご案内(法務省矯正局)
http://www.keimusagyo.go.jp/
各業種別に、請け負っている施設を探すことができる。
全国74箇所の行刑施設を地域別に検索

CAPIC四国HomePage
http://www2.odn.ne.jp/~cdt58520/

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極楽座連載エッセイ「設計図」第39回テーマ
「塀の中の労働市場」
流音弥(2001年12月17日)より

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