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E電

今から10年以上前のことだ。

まだバブル華やかな頃、
CI(Corporate Identity)が大流行し、
多くの、日本語名の企業が
横文字、カタカナの会社名に次々と変わって行った。

当時の国鉄(日本国有鉄道)も
民営化&分割(1987年4月)ということで、
JR(Japan Railwayの略)という
当初は口にするのも恥ずかしいような
奇妙な名前を冠する企業名となった。

さすがに今では慣れて、
「じぇいあーる」はサービスが悪い
とか
「じぇいあーる」の駅員は態度がでかい
などと、
赤面せずに「じぇいあーる」を使えるようになったが。

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だが、「じぇいあーる」よりも
もっと怖いネーミングがある。

東京近郊の首都圏の電車を表す言葉として、
それまで「国電」という言葉が使われていたが、
せっかく「JR東日本」という
「あか抜けた?」 会社名に変わるのだから、
「国電」もイメチェンしないと。。。

ということで、
全国5万通の公募の中から選ばれたのが、

E電(いーでん)

JRが発足した当時は、
社内放送で「E電」を耳にしたり、
駅内の案内板などで「E電」を目にしたり
することが多かったのだが、

いつの間にか、それは無くなった。

「E電」使用後、わずか、4ヶ月後の時点で
「E電」が市民から不評であることが明らかになり、
大量に投入した広告、ポスターにも関わらず、
我々の意識から削除されて行ったのだった。

私は、発表された時から、
死んでも「E電」は使うまい と心に決めていたし、
良識と美的感覚のある方は
皆同様であったに違いないと思う。

「E電」という単語のボイコットは、
日本人の美的価値観の最後の砦であった
と言えるだろう。

いずれにせよ、
いくらお上の命令や大企業の宣伝であっても、
名前をお仕着せするのにも限界がある
といういい前例になった。

それに、そもそも、
「E電」という言葉自体の必要性が無い。

山手線
中央線
京浜東北線
総武線
高崎線

というように、
もともと路線毎に名称があるので、
それを使えば事は足りるのだ。

また、これらをまとめて指したい場合は、
「東京首都圏」のJR路線
と言えば済む。

つまり、「単語」は必要性があって初めて
存在する価値があると言えるだろう。

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ちなみに、E電の名称を決めた選考委員には、
JR東日本の幹部以外に、
作曲家の小林亜星氏
カメラマンの沼田早苗氏
などがいたそうだ。

首都圏の「国電」に代わる新名称を
15日間公募した結果、
応募総数は 59,642通、
名称数は   2,513種類。

1位 「民電」
2位 「首都電」
3位 「東鉄」
4位 「日電」
5位 「民鉄」の順

1987年5月13日の最終選考会で
最後まで残った候補名は  

 2位 「首都電」、  
 9位 「JR電」、
20位 「E電」

の3つ。

新会社のイメージ作り、
発音のしやすさ、
親しみやすさ

などの条件から
最終的に「E電」が満場一致で決まった。

20位からの大抜擢だった。

なお、選考に当たった小林亜星氏は

「Eには、
 East
 Enjoy
 Everyday
 Energy

 などの意味が込められ、
 慣れ親しむとなかなかいい名称だと思う。」

と話したという。

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なお、海外の電車事情に詳しい方によると、
ドイツでは都市の近郊電車を「 S-Bahn 」
地下鉄を「 U-Bahn 」と呼び、
それぞれ乗り場などの案内板では
「 S 」
「 U 」
の文字で表示されているという。

E電の選考に当たり、
JR東日本の幹部
(当然、海外の電車事情にも詳しいはずだ)
の頭にはそれがあったのではないだろうか?

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ところで、
未だに、「E電」という案内板が残っている駅がある。

私自身も、最近、どこかの駅構内で発見して
大喜びした記憶があるのだが、
残念ながら、
どこの駅であったか、失念してしまった。

確か、品川駅だったような気がするが。。。

インターネットで調べると、
1999年12月時点で
上野駅の1階の新幹線エスカレーター前の柱に
「E電のりかえ口」とあったそうだ。

また、2000年11月時点で、
東京駅の案内表示にも発見されている。

果たして、これらは、今でもあるのだろうか?

それにしても、
あれだけ不評だった「E電」を未だに残して置くとは。。。

JR東日本の、ささやかな抵抗なのかもしれない。

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流音弥
2002年1月19日

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