読み物ナビ
 
楽天トラベル 海外航空券予約 ペットと泊まれる宿
朝食付きルーム検索
鉄道沿線検索
温泉宿予約
大浴場のある宿検索
高級ホテル・旅館 プレミアム
インターネットができるルーム検索
 
楽天市場  楽天ブックス(書籍)  楽天フリマ/オークション
ダイエット 健康食品/サプリメント 健康グッズ/健康器具
ファッション ブランド品 ジュエリー/アクセサリー
美容/コスメ/香水  ヒーリング/癒し/アロマ
フラワー/ガーデニング キッズ/ベビー/マタニティ
インテリア(家具)/雑貨 キッチン/食器 文具雑貨
ペット/ペット用品 おもちゃ/ホビー/ゲーム 
チケット購入(音楽/演劇/スポーツ) CD/DVD/楽器
グルメ/食品/ドリンク お菓子/デザート/スイーツ
ワイン 日本酒 焼酎 自然食品 海産物 

お眼鏡にかなう眼鏡屋さん(職人編)

眼鏡をかけるようになって、
物がよく見えるようになり、
確かにいいことずくめだったが、
しばらくしてから、眼鏡に関して
ある一つのことに悩まされるようになった。

それは、メガネのフレームが耳に強く当たり、
その部分がこすれて、次第に皮がむけて、
しまいには血が出てかさぶたできてしまったのだ。
かさぶたはメガネをかけている間は一向に治らず、
しばらくメガネをやめるとかさぶたが治るが、
またメガネをかけるとかさぶたが出来る
という繰り返しが続いた。

血が出てかさぶたが出来るくらいだから、
耳のフレームに当たる部分は擦りむけてかなり痛い。
一体なぜだろう。
レンズをガラスにした為、メガネ自体のの重量が増して、
その結果耳に負担がかかっているのだろうか?
それならば、ガラスレンズのメガネをかけている他の人にも
そういう現象がでるはずだ。
だが、そういう悩みについて聞いたことが無かった。

私は、かさぶたが出来るのが、
いつも右側の耳であることに注目した。
もしかしたら、
右側にメガネの重量が偏ってかかっているのかもしれない。
長い間、鏡に映る自分の顔を見つめながら、
私はその原因は何であるかを考えた。

そして、突然のように私はある事実に気がついた。
私の耳の高さは、
右の耳の方が左の耳よりもやや上の位置にあるのだ。
人間の顔は左右対称ではない
と何かのテレビ番組で放送されていて知っていたが、
耳も同様に左右対称であるとは限らなかったのだ。

右耳の方が高い位置にあった為、
メガネは右耳にその大部分の重量をかけていた。
その結果、右耳の皮膚の耐久力の許容限界を超え、
出血してしまったのだ。

原因はわかった。
だが、私の耳の左右の高さを同じにすることなど、
整形手術でもしなければ出来る訳が無い。
それならば、メガネのフレームを調節して、
右耳に負担がかからないようにできないだろうか?

早速、翌日、メガネを購入したメガネチェーン店に行った。
店員は、
「確かにそういう方は時々いらっしゃいますね。
 フレームの耳に当たる部分の曲がり具合を変えれば、
 耳への負担は和らぐと思います。」
と、慣れた手つきでフレームを暖める機械でフレームを暖め、
「ハイ、できましたよ。これで様子を見てください。」

私は、その場でメガネをかけてみたが、
特に前と変わった感じはしなかった。
こんな簡単にメガネは直るものなのか?
と半信半疑ながら、数日間メガネをかけて様子を見た。
だが、案の上、一向に耳の状態は良くならず、
かさぶたも治らなかった。
再度、先のメガネチェーン店に行き、
フレームを調節しなおしてしまったが、
それでも変わらなかった。

なぜ、私ばかり苦しまなければならないのだろう?
そうだ、もしかしたらあの店員の腕が悪いのかもしれない。
そもそも安売りのメガネチェーン店だし、
しかも、こんな田舎の街だ。
腕の良い店員を配置する訳が無い。
いる訳が無いのだ。

こうなったら、腕の良い眼鏡屋を探すしかない。
安売り店ではなく、最近できた店でもなく、
昔から続いているような古い眼鏡屋だ。

そう思い立った矢先、
母と市内の百貨店に買い物に行く機会があった。
エスカレーターで上っていく途中、
あるフロアーに小さな眼鏡屋のブースがあるのを発見した。
ちょっと寄っていくから、先に行ってて!
私は母と別れて、その眼鏡屋のブースに近寄った。

その眼鏡屋は、残念ながら、メガネチェーン店の支店であった。
だが、そこに数人いた店員は皆かなりの年配で、
おそらく眼鏡屋を開業していたが単独では難しく、
メガネチェーン店の支店として働くしかなかった
という雰囲気が感じられ、
高校生の私にもうかがい知ることができた。
メガネを買った安売りメガネチェーン店の店員には無い、
威厳のような、職人気質のようなものが感じられたのだ。

もしかしたら、私の思い過ごしなのかもしれないが、
駄目もとでお願いしてみよう。
私は、その店で買ったメガネでは無いこと、
そのメガネをかけると右耳に当たって痛くてたまらないこと
をその店の中で一番偉そうな中年の男性店員に話し、
調節してもらえないか尋ねてみた。

その店員は「少々お待ちください」と言って、
メガネを持って奥にひっこみ、数分後に戻ってきた。
「これで直ったと思います。かけてみて下さい。」
私は、早速かけて見て驚いた。
それまでと比べて、明らかに右耳に圧力を感じないのだ。
「お金をどれ位、お支払いすれば良いのでしょうか?」
「いえいえ、これ位でお金は頂けませんよ。」
その店員はそう言って微笑んだ。

数日後には、私の右耳のかさぶたはきれいに取れ、
メガネをかけた時に苦痛を感じることは一切無くなった。

技術というものは、これ程までに
人に依存するものなのだろうか?
私はこの時、
「職人」という者の持つ技術の凄さを思い知ったのだった。

次に、メガネを作るときは是非この店にしようと
私が若い心に誓ったのは当然のことだった。
だが、この後、私は東京に下宿することとなり、
今日に至るまで、その店を訪れたことは無い。
あの店は、あの百貨店にまだあるだろうか?
あの男性店員は、まだいるだろうか?
いや、おそらくいないだろう。
年齢からして、定年を迎えて既に引退しているはずだ。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=

流音弥
2003年3月16日

←読み物ナビ・フレームトップページ