お眼鏡にかなう眼鏡屋さん(失敗編)
2つ目のメガネは、
私が現在住んでいる街の小さなメガネチェーン店で購入した。
5年程前のことである。
さすがに、最初のメガネを10年近く使い続け、
いい加減飽きてきた。
どこか故障したという訳ではない。
さすがポルシェデザイン。
丈夫に作られているせいか、
落としたりしてもレンズが外れることすらなかった。
メガネを換えたいと思ったのは、
気分転換ということもあるが、
イメージチェンジしたいというのが大きな理由だった。
最初のメガネはやや大きめでがっしりしており、
当時は大き目のレンズが流行だった。
だがその後、小さめのレンズのメガネが流行り始めて、
大き目のメガネにはダサくて野暮ったいイメージが
つきまとうようになったのだ。
私の勤める職場は結構女性が多かったので、
服装やアクセサリーに無頓着な私でさえ、
多少は気を使うようにはなっていた。
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私は通常、携帯電話や家電製品などを買う時は、
わざわざ電車に乗って最寄のターミナル駅にまで行って、
そこの大きな量販店や専門店で買うことにしている。
住んでいる街にも、小さな店ならあることはあるが、
値段はともかく、品揃えが少なく、
「安物買いの銭失い」になりかねなかったからである。
以前、電気シェーバーを
会社近くの小さい店で買って失敗して以来、
できるだけ、小さな店では買わないことにしていたのだ。
もちろん、近場ならば時間が節約できる
というメリットはあるかもしれないが、
納得できない買い物をする方がはるかに問題があった。
にも関わらず、
私は自分の住む街の小さなメガネチェーン店で
生涯2番目のメガネを購入してしまったのだ。
私が自分の買い物の鉄則を破ってしまったのは、
当時、仕事が非常に忙しく、
毎日午前様で睡眠時間も少なく、
体力的にも疲れ切っていたことにある。
いったん、自宅に帰ると家の外に出るのさえ億劫になる。
土日にしっかり休める日があっても、
自宅から半径1km以内までしか動く気力と体力が無い。
通勤する日のように電車に乗るのも面倒だったし、
何より人ゴミの中を歩くことが苦痛だった。
そんな状態でありながら、
でも、メガネは買い換えたい
という気持ちは強かった。
「小さくてもチェーン店には違いないのだから、大丈夫だよ。」
と心の中の「ものぐさ太郎」に毎日のようにそそのかされると、
「そうだよね。そうじゃなかったら、お店続けらないはずだし。」
と自分を納得させる言い訳を考え出すようになり、
ある日、とうとう、
前々から目をつけていた自宅近くにある小さなメガネチェーン店
(支店にしては本当に小さすぎるのだが)
に足を踏み入れてしまったのだった。
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最初のメガネの時は、
結構、時間をかけて選んだのだが、
この時は店内に入ってから、5分程度で選んでしまった。
気に入ったメガネがすぐに見つかったからではない。
店自体が狭く、商品の品揃えが少なく、
これなら無難だ(ベストという意味ではない)
と思えるデザインのフレームが1つしかなかったからだ。
そもそも選択の余地が無いから、
迷いたくても迷いようがない。
全く似合わないメガネではない
という意味での「無難なメガネ」なのだから、
後はそれを買うか買わないかという選択しかなかった。
物事の選択において、
同等の比較検討する対象が無い場合ほど、
悪い選択をするものである。
結婚相手しかり、職業しかり。
どちらにしようか、どれにしようか迷うことで、
物事の本質、大事な点が見えてくる。
迷う過程によって、
結果として、自分の考えがまとまり、
最良の選択をすることができる。
だが、選択するものが1つしかなかったらどうだろう。
これを選ぶか、もしくは選ばないか
という選択自体の選択においては、
通常、「選ぶ」ということを選択する傾向がある。
仮に「選ばない」を選択すると、
永久に自分は
それより優れたあるいは同等のものと出会えないのではないか
という不安が頭をよぎる。
その為に、多くの人は早まって、
「無難なものを選ぶこと」を選択してしまう。
そして、後で、それよりもずっと良いものにめぐり合って、
「あの時、選ぶことを選択せずに我慢しておけばよかった。」
と後悔するのである。
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結局私は、
当日残された時間で、あるいは
日を改めて別の日に、
電車に乗って、
より品揃えの多い、大きなメガネチェーン店に行く
というちょっとの手間を惜しんだが為に、
その後の5年間を、
満足しきれない「無難な」デザインのメガネで
我慢せざるを得なくなったのだった。
教訓その1:
何かを買う時は、
「品揃えが多い」、「大きな」お店に行くべきである。
教訓その2:
「無難」とは、決して「満足」には至らないことである。
ゆえに、「無難」な選択は最終的には「無難」ではない。
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流音弥
2003年3月18日







