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ウインナーコーヒー

正直に言おう!

私には、常識が足りない。
さすがに今は、会社の同僚、友人達から、
そして、インターネットから、
いろいろな情報を入手できるようになったので、
それほど日常生活で支障を来たすことは少なくなったが、
大学生になったばかりの頃は、
まさに常識知らずの極地。

浪人時代、人とも会わずに自宅にこもって、
数学と理科の問題を朝から晩まで解いていると、
勉強以外のものを全て切り捨てると、
人間こうまで、常識不足になるものなのだろうか?
自宅の猫とばかり話していたからいけないのか?

常識を身につけるには、より多くの人と付き合うことだ。
他人との会話では、多くの情報のやりとりが行われる。
それが常識をはぐくむのである。
もちろん、付き合う人の選択も大事だ。
常識の無い人、教養の無い人と付き合っても、
常識に関しては得られるものは少ない。

本や新聞を読んでも、
それなりに常識的な知識は身につくが、
それはあくまでも知識に過ぎない。
実践的ではないのである。
実践的でない知識は常識の足元にも及ばない。
だが、その重要性が分かってきたのは、
残念ながら最近のことである。

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さて、普通の学生は大学に入ると、
学生生活をエンジョイする為に、
何らかの部活または、サークルに所属する。
常識欠乏症 の私も例外ではなかった。
最初は、真面目な環境系サークルに入ったが、
その余りの真面目すぎに窮屈さを感じ、
ちょっと遅れて9月頃にテニスサークルに入会した。
たまたま、練習に出てくる真面目な新人が少なく、
追加募集していたのだ。

テニスは中学時代に軟式を部活でやっていたので、
硬式、軟式に違いはあっても、ある程度自信はあった。
高校時代にも、体育授業の中の競技種目の1つに
硬式テニスがあったので、
ある程度、硬式のボールにも慣れていたこともある。

勉強ばかりしていた1年間に積もりに積もった
ストレスを発散する意味で、
運動、特にテニスはとても魅力があったのだが、
それと同時に、
テニスサークルなるものはどのようななものであるか
それが知りたいという目的もあった。

大学のテニスサークルと言えば、
テニスの練習は一応形式的にするが、
他の女子大から来る会員とのコンパ、合宿が目的で、
男子学生が集まってくるお遊びクラブ。
従って、普通の大学生にとっては、
楽しい大学生活を送るための必須アイテムだった。
当時私が、新聞やテレビや雑誌から入手した情報を元に
総合的に判断しても、
大学生活におけるテニスサークルの重要性は高かった。
なぜ、それほどまでに、テニスサークルが人気があるのか?
その理由が知りたかった。

もう一つ、私がテニスサークルに入った目的がある。
私は女性が大の苦手だったのだ。
それをなんとか克服しなければならない。
その為には、女性と話さざるを得ない環境に
自分を放り込む必要がある。

私は高校が男子校だったので、
女性に接触(実際に触れるという意味ではない)する機会が
殆ど皆無に近く、
通学で利用するバスの中で遠くから眺めるしかなかった。
高校時代に女子校生と会話した数は、
おそらく10回を下回っていたはずである。
しかも、殆どが、文化祭に来た女子校生である。
これは、会話のうちに入らないのかもしれない。

また、中学の時も、クラスに女子はいたが、
やはり苦手で、余り口をきけなかった。
中学生とは言え、大人の女性へ変身する初期段階。
「なんとなく女っぽさ」が感じられ、
それが逆に不潔に感じられ、
女子とは殆ど口をきかなかった。
もっとも、それでも用が足りてしまったのだから始末が悪い。
私の女性コンプレックスの基礎は中学時代に作られたと言える。

そして、私の女性コンプレックスは、
男子高校という最高の閉鎖環境で熟成され、完成したのだった。

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こんな、女性コンプレックスの塊である私も、
大学のテニスサークル活動で、
年中、女性と会話するようになってから、
女性に対する苦手意識が多少和らいできた。
だが、それはあくまでも表面的なものであり、
気持ちの中では、違和感がかなり強かったことは事実である。

テニスの練習の後は、
みんなで喫茶店でしゃべるのが、
そのテニスサークルの慣わしだった。
もちろん、酒抜きである。
毎回飲んでいたら、あっという間にお金が無くなるので、
その点では、非常に健全なテニスサークルだったと言える。

あれは、忘れもしない、
9月の練習後に行った喫茶店でのことだ。
大学2年生になっていた私は、
同学年の男子1名、1年生の女子2名の組合せで
テーブルに座った。

さすがに2年にもなると、私も余裕が出てきて、
先輩風を吹かすようになる。
後輩女子に対する言動や振る舞いで格好もつけるようになる。
そんな自分を後で思い出しては、ひどく落ち込むのだが。。。

いつもはアイスコーヒーを頼んでいたのだが、
その日はちょっと趣向を変えて、
ウィンナーコーヒー」を頼んだ。
ちょうど腹が減っていたのだ。

ウインナーがセットで付いてくるコーヒーなんて面白いな。
どんなんだろ?
私は、内心楽しんでいた。

後輩女子の1人は、すかさず、
ウィンナーコーヒーを頼むなんて、
 今日の西塔さんて、クールですね。」

「この子は、何を言っているんだろう?
 ウインナー付きコーヒーをクールと感じるのか?
 変わった子だな。。。」

私は、まだ間違いに気がついていなかった。

運ばれてきたウィンナーコーヒーを見て、
私は真面目な顔でウェイトレスに尋ねた。

ウインナーは付いていないんですか?

こうして、私の常識欠乏症は露呈してしまった。
先輩面できたのはこの時までである。

以後、私のサークルにおけるあだ名は「ウインナー」となった。
そして、一時期影を潜めていた女性コンプレックス
これを機会に見事に復活したのだった。

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流音弥
2003年9月7日

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