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イモムシの幽霊

私は、イモムシが大嫌いだ。

女性の多くはイモムシを嫌いだと思うが、
男である私でも、死ぬほど嫌いなのだ。

子供の頃、
親戚の家のみかんやゆずの木の葉にくっ付いている
アゲハ蝶の幼虫でよく遊んだものだった。
イモムシは、子供にとって動力を自ら備えている
最高の玩具である。

普通のイモムシは、はっきり言って醜い。
色や形に面白みが無い。
気持ち悪さ以前に、その醜さ、つまらなさから、
私は、普通のイモムシが嫌いだった。

一方、アゲハ蝶の幼虫は、他の醜いイモムシと違って、
鮮やかなグリーンだ。
まだ幼い子供の美的感覚ではあったが、
あの美しい模様には心を奪われずにはいられなかった。

こうして、私は、アゲハの幼虫には唯一触れたのだった。

だが、ある日を境に私は、
アゲハの幼虫も触ることができなくなってしまった。
それどころか、まともに見ることさえできなくなってしまった。

それは、確か小学生5年の時だった。

いつものように仲の良い友人と一緒に学校から帰る途中、
道の真ん中にアゲハの幼虫(10センチ位)が
ノソノソ蠢いているのを見つけた。
道を渡ろうとしているらしい。

普段なら、道の端まで手で運んでやったり、
そのまま、捕まえて家で遊ぶところなのだが、
その時に限って、
自力で渡らせてやろう、渡らせるべきだ、
などという変ないたずら心を出してしまったのだ。

車が余り通らない道なので、
自力で渡り切るだろうと思ったということもある。
車がビュンビュン走るような道だったら
きっと別の選択をしていただろう。

再び帰る方向に歩き出した私と友人。
だが15mぐらい歩いたところで、
なんとなく心配になって後ろを振り返った。
ちょうどその時である。
車が猛スピードでやってきて、
アゲハの幼虫の上を通過。
パチンという何かがはじける音とともに、
道路に飛び散る液体。

うわぁ〜。
思わず、頭を抱えながら、2人は走り出した。

そのうち疲れ果ててまた歩きながら、
もう、あの道は通りたくないね
と話していると、突然、目の前にそれは出現した。

道の真ん中に、さっきと同じ位の大きさのアゲハの幼虫が、
さっきと同じような感じでノソノソ歩いているのだ。

イモムシの幽霊だ〜!

一目散に2人が走り出したことは言うまでも無い。
2匹目のアゲハの幼虫が幽霊であったかはわからない。
外見は似ていたし、区別などできようがない。
だが、偶然にしては余りにもタイミングが良すぎる。
いくらなんでも、イモムシに呪われるなんて悲しすぎる。

それ以来、私は、イモムシを見るたびに、
車に弾かれて「パチン」とはじけた瞬間を思い出してしまう。

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流音弥
2003年9月29日

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