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仕返しっぺ

今日、駅から自宅への帰り道で、
前をタバコを吸っている若者が歩いていた。

いつも感じることだが、
タバコを吸わない者にとって、
歩きタバコほど頭に来るものはない。

強い向かい風が吹いていない限り、
タバコの煙は後ろに流れ、
後ろに歩いている人がその被害を被るからだ。

タバコの煙は、
嗅いだ者の鼻に不快感を与え、
目の涙腺を刺激し涙を流せ、
肺に入り肺胞、肺壁に発ガン物質を付着させ、
さらに血管に入り末梢血管を収縮させる。

歩きタバコの問題点は、
被害が単なる受動喫煙ではないこと
だ。

タバコを吸った者の後ろを歩く者に、
否が応でも正面から直接タバコの煙を吸わせる
という点において、
その人の顔に直接タバコの煙を吹きかけるのと同じ行為
と見なせるからだ。
つまり、傷害行為の一種と言えるだろう。

しかも悔しいのは、
当のタバコの煙を撒き散らしている張本人が、
すがすがしい空気を吸う事ができる点だ。

喫煙者の多くが
自然の中のきれいな空気の中でタバコを吸うとうまい!
とほざくのをよく耳にする。
自分は空気を汚しているくせによく言うよ!
といつも思うのだが、実際そう感じるらしい。

前を別の歩きタバコする人がいない限り、
歩きタバコする人は常に、
「きれいな空気」を吸い
「タバコ」をうまいと感じる事ができる。

一方、その後ろを歩く非喫煙者は、
常に「まずい空気」を吸い、
不快感を感じ続けなければならない。

あらゆる犯罪行為・迷惑行為に通じる事だが、
歩きタバコ、そして喫煙行動による、

被害者は常に被害者であり、
加害者は常に加害者である

常に一方的で理不尽で不公平な利益構造がそこに存在する。

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さて、歩きタバコを目の前にした嫌煙者が、
自己防衛の為にとれる行動の選択肢は余り無い。

1つ目は、別の道を通ること。

だが、別の道を通ることで回り道になれば、
時間と体力のロスとなる。
また、別の道でも歩きタバコに遭遇する可能性もある。

2つ目は、歩くスピードを緩めて、歩きタバコと距離をとること。

この場合、時間のロスになり、
急いでいる場合、時間に遅刻する可能性もある。
最悪な場合は、後ろから別の歩きタバコに追い抜かれ、
再び煙を浴びせられるかもしれない。
これは屈辱以外の何物でもない。
私のこれまでの経験ではその確率は非常に高い。

3つ目は、歩くスピードを速めて、歩きタバコを追い越すこと。
どうしても早歩きになるので、体力的にはきつい。
運動にはなるので、体にはいいのかもしれない。
目的の場所に早めに到着するというメリットもある。

しかし、追い越せたとしても、ほっとするのもつかの間、
またその前にも歩きタバコがいる場合もある。
その場合は、
その歩きタバコも追い越さなければならないので、
前に歩きタバコがいなくなるまで、
ハイスピードで歩き続けなければならないという、
無限地獄となるだろう。

また、追い越しで特に困るのは、
タバコの煙を吸い込みながらの負荷運動であり、
気管・心肺機能にかなりの負担を強いられることだ。
何でこんなことをしなければならないんだ?
という悲壮感を感じるかもしれない。

だが、前者2つが「逃げ」の姿勢であるのに対し、
最後の選択肢は「攻め」の姿勢である。
どうせ行動するなら、「攻め」の姿勢で生きたいものだ。

ただし、残念ながら、この種の「攻め」の姿勢は、
「敵」への攻撃、「敵」にとっての不利益にはならない為、
なんら改善にはつながらない。
いわば一人相撲のようなものだ。

気持ちとしては、
後ろからハリセンで頭をぶん殴りたいところだが、
傷害罪とみなされる為、現実的ではない。

喫煙行為は「傷害」「殺人」に通じるにもかかわらず、
その「密度」の薄さから即効性が無い。
意識的、無意識的にかかわらず、
合法的に人の健康を奪い死に至らせることができる。
法律というものがいかに、ざるで、不公平で、
加害者有利にできているかがわかる。

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さて、私はいつもの攻めの姿勢によって、
前を歩いている歩きタバコの若者を追い越そうと、
歩みを速めた。

早歩きというのは、競歩のごとく非常に疲れるものである。
いっそ走った方が楽なのだが、
状況からして余りにも不自然なので、今回はやめておいた。

場合によっては走るのもいいだろう。
暗い夜道で後ろから人が走って近づいて来ると、
たいていの人は警戒して緊張するはずだ。
そもそも被害者はこちらなのだから、
それくらいの脅しをしてもかまわないと思う。

歩きタバコの若者を追い越し、
若者の前に躍り出た瞬間、
それは突如起きた!

ブリッ!

早歩きをするために気張った為だろうか、
それとも、
最近暑い日が続くので毎晩飲むビールを飲むが、
その炭酸ガスが大量に体内に残っていた為だろうか?

とにかく、でかい音がした。

後ろの歩きタバコの若者にもはっきりと聞こえたはずだ。

「ヤッター!」
私は思わず、心の中でガッツポーズをした。

突発的な事故とは言え、
これほど最高のタイミングで屁が出たのは初めてだ。

男にとって、
目の前で屁をされることほど屈辱的なことはない。
電車の中で、
前に立っているオヤジが猛烈な臭いの屁をかましたときは、
首を絞めてやろうかと思った。

例え臭いがしなくても、音がしなくても、
屁を嗅がされることは最大の屈辱に感じるのだ。
俺のケツを拭け!
俺のケツを舐めろ!
と言われているようなものなのだ。

後ろを振り返って、
肉体的苦痛、あるいは精神的苦痛で
ゆがんだ若者の顔を見てみたいとも思ったが、
それだとわざとしたと疑われかねない。
最悪な場合、いんねん(?)つけられて喧嘩になるかもしれない。
仮にそうなっても、体力的に勝てる自信はあるが、
こんな奴は相手にするだけの価値が無いので、
知らん振りしておこう。

幸い、後ろの若者が何か言ってくる気配はなかった。
確かに爆裂音が彼にも聞こえたはずなのだが、
面倒を起こしたくなかったのか、
余程寛容な精神を持っているのか、
理由はわからない。

もしかしたらちょっとした言い合いになるかもと、
内心期待していたところもあり、
あてがはずれてがっかりした位だった。
いずれにせよ、
こういう場面では大抵の人は我慢して耐えるものなのだ。

私は、満面の笑みを浮かべながら、
早歩きのまますたすた歩き続け、自宅に帰った。

歩きタバコの煙を吸わされた不快感はもはやどこにもない。
むしろ久しぶりに晴れ晴れとした気分だ。

それよりも一番心配だったのが、
あの強烈な音の副産物だった。
もしかしたら、
ガスと一緒に腸の中身が少し漏れ出しているかもしれない。

この年齢でウンコタレかよ!
自宅で着替えながら、
おそるおそるパンツの中をのぞいてみる。

黄土色の付着物は認められなかった。
いや〜、良かった、良かった。

さあ今晩もビールをがぶがぶ飲んで、
ガス貯めて、明日に備えることにしよう!

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流音弥
2004年7月22日

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