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学力と遺伝子診断

(前回のエッセイより)

個人の遺伝子情報が漏れると
1.結婚を拒否される
2.入学・就職で不利になる
3.生命保険への加入を拒否される ことが考えられる。

=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=

では、「2.入学・就職」についてはどうか?

少なくとも、私立の小学校、中学校の入学試験では、
重要な判断材料になりうると思われる。
そもそも、 この時期の入学試験(筆記試験)によって
どれだけ本人の資質(潜在能力)を判断できるか、
結構怪しいものである。

最初は成績優秀に見えた子供が、
単なる早熟であっただけで、
その後は、案外と成績が伸びない
というのはよくある話である。

学校側もそれを理解しているから
資質(将来、良い大学に入れるという意味での)
があるかどうかを
親の学歴や職業で判断するしかない。

つまり、その家系の遺伝的学力を基準に、
子供の学力の潜在能力を予想するわけだ。

確かに、親の学歴や職業で
子供の潜在的学力はある程度推定できるかもしれない。
しかし、学歴や職業は
その人の育った環境にも大きく左右されるため、
判定誤差はかなり大きい。

中産階級以上の子供の方が、
一般的に学力水準が高いのは、
たまたま育った環境が、知的好奇心を刺激するような環境で、
勉学にも専念しやすかったからである。

そう言えば、以前、
「東京大学合格者の親の年収は平均よりかなり高い」
という記事を読んだことがある。

一見すると、

  親の年収が高い(A)
 →親が成績が良い(B)
 →子が成績が良い(C)

という議論が正しく思えてくる。

AとB、BとCの相関関係を見ると
確かに、右上がりの相関図が得られる。
しかし、実は、これらは「疑似相関」と呼ばれる関係であり、
この関係を作っている本当の要因は、
「環境」及び「教育」である。

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「疑似相関」とは、

統計数字を見ると、
一見、直接の相関があるように見えるが、
全く別の隠れた要因がそれらの関係を形成している
場合を言う。

「風が吹くと桶屋が儲かる」
ということわざ(?)があるが
これこそ、疑似相関の典型である。

風が吹く

→砂ぼこりが出る

→盲人が増える
  (昔は、良質の目薬が無く、衛生状態も悪かった)

→三味線の需要が増える
  (昔は、盲人の職業の1つとして三味線弾きがあった)

→猫の皮の需要が増える
  (猫の皮は三味線に使われる。
   猫の皮は、他の動物の皮では出せない、
   独特のいい音が出せるそうだ)

→猫が減る
  (今でも、猫を捕まえて、
  三味線業者に売る密猟者がいる)

→ネズミが増える
  (最近は、ネズミと仲良く遊ぶ平和的な猫もいるそうだ)

→桶が足りなくなる
  (ネズミが桶をかじる。
   元は、箱であったのがいつのまにか桶に転じた)

→桶屋が儲かる
  (棺桶、風呂桶には限定していないらしい。。。)

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さて、話をもとに戻そう。
「東京大学合格者の親の年収は平均よりかなり高い」
という統計から、次のような考察が得られる。

子供を幼少から英才教育し、
学費の高い塾にも通わせる余裕があれば、
成績を伸ばすことは可能である。
つまり、「環境」と「教育」こそが大事であること。

人が他の動物と違って、
ここまで文明を築きあげることができたのは、
ひとえに、「教育」の力によるところが大きい。
多少、理解能力や暗記能力が他の人より劣っても
反復学習により、十分カバーできる。

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では、同じ教育を受けても、
学力に大きな個人差が発生するのはなぜか?
これこそが、個人の「資質」である。

「資質」とは何によって形成されるかと言えば、
「環境」による部分も大きいのだが、
ここでは、もう1つの要因を考えたい。

それは、「遺伝」による「資質」である。
「暗記能力」や「理解能力」は脳の能力の1つであるが、
脳の能力を規定しているのは、
脳の構造及び脳神経の成長能力である。

そしてそれらを規定しているのは、
最終的にはDNAであり、遺伝子である。

「頭の良くなる」遺伝子という直接的な遺伝子が
存在するとは思えないが、
少なくとも、

  ・脳神経経における情報伝達スピードを高める遺伝子
  ・脳の記憶容量を高める遺伝子
  ・脳内に記憶されたデータから
     効率的にデータを取り出せる遺伝子
  ・右脳の使用率を高める遺伝子

など、「間接的」に「頭を良くする」遺伝子はあり得る。

おそらく、この10年以内に発見されるだろう。
いや、もう発見されているかもしれない。
社会的混乱をまねくため、
情報規制がかけられている可能性もある。

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結局、学力というのは、

(1)生まれつき持っている資質「遺伝子」
(2)その育った「環境」

(3)受けた「教育」

の3つによって形成される。

「遺伝子」を変えることはまずできない。
(将来的には可能だと思われるが。。。)
「環境」を過去にさかのぼって変えることもできない。

しかし、 「教育」を効果的に行うことによって、
「学力」を高めていくことは十分可能である。
そこで初めて、「学校」というものの存在価値が生まれてくる。
学校は、その生徒の潜在能力を
どれだけ伸ばせるかが使命であるからだ。

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だが、「教育」自体にも実は限界がある。
効果的な教育方法というものは、もちろんあるだろうが、
一度、カリキュラムとして完成してしまえば、
それ以上の学力向上の手段とはならない。

結局、「私学」が「高校」「大学」への
高い合格率を実現する為には、
より、学力が伸びる可能性の高い、
潜在的資質の高い生徒を集められるかどうかにかかっている。

もしその生徒の「潜在的学習能力」の
遺伝子情報がわかれば
これほど、確実な判断材料は他には無い。

数年後には、
遺伝子診断を要求する学校が出てくるかもしれない。

【遺伝的資質推薦枠】  
遺伝子資質の高い子供の為の優先的入学制度。
 例え、現在の学力が低くても
 将来の可能性を考え、特別に入学が許されるという制度。

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今回のエッセイでは、「学力」と「遺伝子」について述べたが、
「運動能力」と「遺伝子」についても全く同様の事が言える。
いや、むしろ、 「運動能力」の方が「学力」以上に、
遺伝子との相関が高いと思われる。

中学、高校のスポーツ枠の推薦入学枠では、
遺伝子診断が必須になる可能性は高い。
数年後の身長、体重、身体能力全てが
シミュレーションできるはずだ。

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極楽座連載エッセイ「設計図」第19回テーマ
「学力と遺伝子診断」
流音弥(2001年5月8日)より

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