アルツハイマー遺伝子盗難事件
5月9日、日本人の研究者2人が
アルツハイマー病に関する遺伝子の研究素材を
盗み出したとして米国で起訴された。
かなり前の事だが、
1982年に日立製作所と三菱電機の社員が
米国IBMのコンピュータ情報を盗み出そうとして
逮捕された事件を思い出す。
当時急成長していた日本のコンピュータ業界は
それで、大きくつまづいた。
今回の起訴も、
それと同じような道をたどるような気がしてならない。
元々、米国は、知的所有権に敏感であり、
また、その重要さを知り尽くしている国である。
今回の起訴は、アルツハイマー病や癌の治療薬を開発する
ライバル国である日本を牽制するものであることは明白である。
アルツハイマー病の患者は世界に1500万人いると推定され、
いまだに根本的な治療法が開発されておらず、
各国の製薬メーカーはこの巨大な市場で利益を上げるために
激しい競争を繰り広げている。
特に米国では、父親的なイメージで慕われた
レーガン元大統領がアルツハイマー病と闘病中であり、
その点からも非常に関心が強い疾患である。
---------------------------------------------------
アルツハイマー病に限らないことだが、
疾患の発症は特定の遺伝子と関係があり、
その遺伝子を持っているかどうかで、
その疾患にかかりやすい人とかかりにくい人が出てくる。
この遺伝子を特定し、性質や働きを解明できれば、
その遺伝子の働きを抑制したり、
正常な遺伝子を導入することにより、
疾患を治療することができる。
---------------------------------------------------
日本人研究員2人が本当に
遺伝子研究素材を持ち出したかどうかは分からないが、
起訴という方法で大々的にアピールされると、
本来なら法律に引っかからないレベルの資料持ち出しさえ、
気が引けるようになるのが一般的な心理的傾向である。
結果として、今まで以上に
米国外への情報流出が防げるという仕組みだ。
人間の心理をうまく突いている。
このような威嚇のポーズは米国の上等手段であり、
その背景を知った上で、
日本も対策を考える必要がある。
---------------------------------------------------
日本の研究素材の管理はどうなっているのか?
結構、管理が雑ではないだろうか?
理化学研究所は約1800人の研究者の内、
別の研究機関から移ってきたり、
3〜5年の研究プロジェクトに企業から参加する、
といった契約職員が8割近くを占めるという。
つまり、人材流動的な研究機関であるといえる。
そのような状態では、
研究素材や研究、研究者の管理ができているとは思えない。
日本はスパイ天国だと、何かに書いてあったが、
産業スパイ天国でもあるに違いない。
今回の記事を見て、
映画「ミッション・イン・ポッシブル2」
を思い出してしまった。
治療薬をめぐる研究者の思惑、
そしてスパイの暗躍。
ヒトの体はもろいものである。
これほど精巧かつ不完全な機械は無い。
映画「アンドリュー」の主人公では無いが、
完全なバイオロイドにでもならない限り、
一生、何かの疾患や怪我に悩まされ続けるのが
ヒトの宿命である。
だからこそ、それを補うための医療があり、 医薬品がある。
---------------------------------------------------
絶対にヒトに不可欠な医薬品、
需要が落ちることが無くならない製品。
企業としては、最高の商品である。
医薬品一つ当たれば、超高層ビルが立つ。
いや、そんなものじゃ無いだろう。
ファイザーは「バイアグラ」で一山当てた。
もともと、米国においても上位に位置し
医薬品開発能力の高い企業であったのが、
日本でも知名度をアップさせた。
---------------------------------------------------
1500万人のアルツハイマー患者に対して
1年間10万円分の治療薬を投与したとすると、
それだけで、年間1.5兆円の市場となる。
また、これがかなりの拡大市場でもあるとも予想されている。
現在までに米国人約400万人が
アルツハイマー病に苦しんでおり、
2010年までに患者数は550万人、
2050年までに1400万人に増加するとみられている。
---------------------------------------------------
一方市場拡大とは逆に、
深刻なのは健康保険制度の破綻である。
高齢化社会が急速に進む米国・日本・先進国で、
アルツハイマー病の治療費が今後10年で急増し、
政府の健康保健制度を脅かすのは明白である。
米連邦政府はこれまですでに、
約5000万ドル(約63億円)を
アルツハイマーの治療費として投入した。
2010年までにこの額が8200万ドル
(約103億円)にまで達する
と米国「アルツハイマー病協会」は予測している。
老人を対象とした老人医療保険や
低額所得者のための国民医療保険
これらを死守する為には、
画期的なアルツハイマー治療薬を開発することが急務である。
実は、米国のバイオ政策は、
ただの利益主義に基づいている訳ではない。
国家存亡の危機なのである。
(本当は、日本にとっても他人事ではないのだが。。。)
=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=
理化学研究所(理研)
http://www.riken.go.jp/index_j.html
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
極楽座連載エッセイ「設計図」第20回テーマ
「アルツハイマー遺伝子盗難事件」
流音弥(2001年5月20日)より







