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ノックアウトマウス

5月25日の日経産業新聞の記事によると、
理化学研究所の研究チームが
脳の神経細胞に蓄積してアルツハイマー病を引き起こす、
タンパク質「ベータアミロイド」
を分解する酵素を発見したという。

先の、日本人研究員によるスパイ疑惑
(アルツハイマー遺伝子研究素材持ち出し)
の直後だけに、発表にはかなり神経を使ったはずだ。

仮に本当に全く無関係であったとしても、
私のように関連性を疑ってみる者も少なからずいるはずだ。

しかし、逆に、潔白に自信があるからこそ
堂々と発表したのだとも言える。
アメリカの目に見えぬ圧力に対して負けない姿勢は
科学者としての姿勢として賞賛に値する。

さて、今回の発見はどのようにして得られたのかというと、
この酵素「ネプリライシン」の合成能力が弱いマウスを
遺伝子操作によって生みだし、調べたのだという。

この実験方法のロジックを追ってみよう。

1.まず第一に、
  ベータアミロイドの分解酵素であるとおぼしき酵素の
  目星をつける。

2.次に、その酵素を作り出すと思われる遺伝子の位置を特定し、
  その遺伝子が機能しなくなるような遺伝子操作を行う。

3.2のような遺伝子操作をマウスの受精卵に施し、
  大量に育てる。
  二十日ネズミというだけあって、
  大人に成長するスピードは早い。
  マウスは実験動物にもってこいの動物だ。

4.マウスの分解酵素の合成能力が弱ければ、
  当然、アルツハイマー病の原因となる
  タンパク質「ベータアミロイド」の量は減らない。

  ということは、正常なマウスよりも「ベータアミロイド」の量は
  多くなるはずである。

5.「ベータアミロイド」の量を測定し、
  正常マウスよりも多いことを確認する。
  それによって、2で無力化した遺伝子が、
  「ベータアミロイド」を分解する酵素を作り出す機能を持つ
  とうことが証明される。

以上のように、
遺伝子がどんな機能を持っているかは、
特定の遺伝子を無力化した動物を作り出し、
それ以外は全く同一の遺伝子を持つ正常(?)な動物と
外見・機能・組織を比較する方法で調べることが多い。

ここで重要なのは、調べたい特定の遺伝子を除いて、
全く同一の遺伝子を持つ動物を生み出す技術。
すなわち、クローン技術だ。

実は、クローン技術の推進が急がれた理由の1つが
このような、遺伝子機能を特定する実験を
正確かつ大量に行う必要があったからなのだ。

さて、今回の実験で用いられたような、
特定の遺伝子を機能を奪われた(無力化された)
マウスのことを業界用語で「ノックアウトマウス」と呼ぶ。

遺伝子操作を施されたマウス2匹を戦わせて、
ノックアウトされた(弱い)方のマウスのことでは、
決してない。
しかし、私は最初、そうだと思っていた。。。

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極楽座連載エッセイ「設計図」第21回テーマ
「ノックアウトマウス」
流音弥(2001年5月30日)より

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