発泡事件
前回のエッセイで述べたように、
健康診断で胃透視検査(胃レントゲン検査)を受けるには、
バリウムを飲まなければならない。
だが、このバリウム飲む前に、もう1つの難関がある。
「発泡剤」なるものを 飲まなければならないからだ。
発泡剤
成分:炭酸水素ナトリウム・酒石酸
特徴:水に溶けると炭酸ガスを出す
発泡剤3〜4gで200ml〜300mlのガス量となるという。
効果:胃を膨らませる薬
通常、胃はしぼんだ状態にあるが、
それでは胃の細部(ヒダ)までは写すことができない。
胃のヒダに小さな病変が無いかをチェックするには、
発泡剤を飲むことによって、
ガスで胃全体を膨らませ、胃のヒダを伸ばす必要があるのだ。
白い粉末顆粒の発泡剤、
これを渡されたコップの水で一気に飲見込む。
すると胃の中で一気にガス化し、胃が膨張する。
胃から漏れ出したガスが食道を逆流して来る。
思わずゲップをしたくなるのだが、
ゲップをしたくなっても、絶対にゲップはしないでください。
胃に充満したガスが減って、撮影しにくくなりますから。
と、レントゲン技師から事前に注意されている。
私としても正確な診断結果が出ないと困るので、
ゲップを我慢するしかないのだが、
これが意外と難しい。
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一般に、
つばを飲み込む
腹式呼吸をする
と我慢しやすいと言われている。
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日常生活において、「ゲップ」は下品な行為とされるが、
それは、あくまでも「ゲップの音」が問題なのであり、
人に聞かれなければ「ゲップ」はしても良いのだ。
従って、音を立てないようにゲップをすることにしている。
だが、ゲップという行為自体を禁止されるとなるときつい。
「ゲップ」はいわば生理現象だから、
「おなら」と同様、我慢できる類のものではないのだ。
我慢しようとして我慢できるのは、
それは、我慢できる程度の生理現象であって、
本当に暴発寸前のものについては、
絶対に我慢などできない。
我慢しても、勝手に出てくるのである。
そんな訳で、私は過去に、
発泡剤を飲んだ直後に何度もゲップをしてしまっている。
もちろん、いつものように音を立てないので、
技師には気づかれないのだが。
その為なのだろうか、
私の胃レントゲン撮影はなぜかいつも時間がかかる。
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ところで、私が生まれて初めて
胃レントゲン検査を受けた時のエピソードを紹介しよう。
確か、20代の後半、今から7、8年前のことである。
当然、発泡剤を飲むのも生まれて初めて。
レントゲン技師から
左手に発泡剤、右手に水の入ったコップを渡されながら
「では、この発泡剤を水で飲んでください。」
と、言われた。
通常、薬を飲むときは、
まず、薬を口に入れ、
次に水を口に流し込みながら、
水と一緒に薬を飲み込む
という手順を踏む。
余りに当然過ぎて、普段は全く無意識に行っている手順だ。
だが、この時は違った。
これから生まれて初めてバリウムを飲むことへの緊張感、
自分の後ろに置かれている、動く手術台のような機械への恐怖心
があったのだろう。
先に水を口に流しこんでから、発泡剤を口に入れてしまったのだ。
さあて、一体どんなことになったか想像はつくだろうか?
発泡剤は、水に溶けるとすぐに、炭酸ガスを発生させる。
「ブクブクブクブク」
私の口の中は、
水に入れたドライアイスのように泡が立ち始めた。
子供の頃に流行った「ドンパッチ」というお菓子のように、
口の中で「パチパチ」発泡剤がはじけ続けた。
さすがの私も、
「う〜ん、はじけるおいしさ!ドンパッチ〜!」
などと、冗談を飛ばす余裕はなかった。
そのうち、口の中に収まりきれなくなった泡は、
まるでカニさんが口から泡を吹くが如く、
私の口から溢れ出し、
ついには、「プシュー」という音とともに、
あたり一面に吹き飛んだのである。
さすがにレントゲン技師もびっくりしたようすで、
慌てて雑巾を取りに行った。
床一面、泡浸し、いや水浸しになったのを、
雑巾で拭き取り
(拭ききれず、ぬれたままの箇所も結構あったが)
「じゃあ、もう1度、発泡剤飲んでくださいね。
先に発泡剤を飲むんですよ!」
さすがに、2度目は落ち着いたせいか、
ドンパッチ状態になることもなく、
問題なく普通に発泡剤を飲むことができた。
胃レントゲン検査を受ける時は、
今でも、あの「発泡事件」を思い出す。
発泡剤を飲むときは、必ず、発泡剤を先に口に入れる。
自分の番が呼ばれるまで待っている間、
頭の中で何度も反芻(はんすう)してしまうのだ。
では、今回の胃レントゲン検査ではどうだったかって?
意外にもレントゲン技師は、
発泡剤と水を同時に渡さずに、
まず、発泡剤だけを私に渡し、口に入れるのを確認した後に、
私に水の入ったコップを渡したのである。
これならば、絶対に飲む順序を間違えることはない。
おそらく、この健診施設でも、
私のように「発泡事件」を起こした人が過去にいたのだろう。
そんなうっかりミスを防止するのに、
こういうささいな気配り・工夫が実は重要だったりする。
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流音弥
2003年8月13日







