骨折男の誕生
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「折れていますね。」
右足を撮ったレントゲン写真を一瞥しただけで、
医師は、あっさりとそう言い放った。
まるで、このセリフを、これまで、
何万回となく患者に対して宣告してきたかのような、
言い慣れたあっさりさであった。
それは、
10分間の苦痛の行列待ちによる受付を済ましてから、
4時間も待たされたあげくのあっけない結末であった。
「中足骨(ちゅうそくこつ)骨折」
右足の外側・前部の位置にひびのような亀裂が
レントゲン写真で確認できた。
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足の骨折は、実は初めてだ。
学生の時に、テニスラケットを膝に思いっきりぶつけて、
3日間、痛みで動けなかったことはあったが、
それ以来、足の怪我とは無縁だった。
足を骨折するということは、
歩けないということになる。
当然、走ることはできない。
移動の自由を奪われるということが
どれだけ不自由なことであるかは、
学生時の経験から、かなり理解出来た。
その衝撃は大きく、目の前が一瞬、暗くなった。
「えっ?捻挫じゃないんですか?」
学生ならば、1ヶ月ぐらい大学を休んでも、
遅れを取り戻すのは大変だったが、
それでも、別段大きな支障ではなかった。
しかし、今や会社に勤める身。
自分自身、やりかけの仕事も残っているし、
部下への仕事の割り振りなどもしなければならない。
企画途中のプロジェクトを他の者にとられるのも
耐え難い屈辱だった。
会社に行かねば。。。
では、どうやって。。。
私の、右脳と左脳は、ようやく推論計算を開始した。
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「君は運がいいよ。
骨は折れているけど、離れていないから、
このままギプスで固定するだけでいいんだ。
もし、離れていれば、手術しなければいけいからね。」(医師)
「ひびが入っているだけということなんですか?」(私)
「折れてひびが入っている状態だから、骨折には違いない。」(医師)
「じゃあ、重傷なんですか?」(私)
「いやしくも、骨折なんだから、重傷だよ。」(医師)
「全治どれ位なんですか?」(私)
「全治4週間位かな。
しばらくは、松葉杖ですね。」(医者)
「松葉杖はどれくらい使う必要がありますか?」(私)
「2週間は、ギプスで固定して、松葉杖を使ってね。
無理して歩いたりすると、骨がうまくくっつかないから、
注意してね。
2週間後に、骨がくっついていることが確認できたら、
かかとをついて歩いていいと思う。」(医師)
「困ったな〜。
松葉杖なんて、
生まれてこの方、使ったこと無いんですけど。。。」(私)
「じゃあ、リハビリ室で、特訓だね。」(医師)
「会社に松葉杖ついて行くのは大変ですね。」(私)
「しばらく、会社休んだら。」(医師)
「そんな〜。無理です(泣)。」(私)
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流音弥
2002年3月19日







