松葉杖、ああ松葉杖、松葉杖!(爆笑)
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車椅子によるつかの間の快適な旅を終え、
リハビリ室に到着した。
リハビリ室の、恐らく理学療法士だろうか、
40歳位の男性が
私の身長に合った松葉杖を選んでくれた。
「よかったね。君のは新品だよ。
人が使った物よりも気分がいいよね。」
まあ、確かにそうだ。
私は、何事ににおいても、お古よりも新品の方が好きだ。
兄のお下がりの服を着るのも、子供の頃から嫌だったし、
古本屋で本やCDを買うことも滅多にない。
そもそも、 私が読んだり聴いたりするような本やCDは、
古本屋には置いてない。
私は、現在自動車は運転していないが、
もし、買う場合でも、中古車には乗るつもりは無い。
その中古車が事故車である可能性もあるし、
何か、怨念のようなものが憑いているような気がするからだ。
住宅もしかり。
前に、いやずっと以前に
そこで人が悲惨な死に方をしているかもしれない。
恨みを抱いた霊魂は、自縛霊となって、
その家に取り憑いているかもしれない。
そう言えば私が現在住んでいるアパートも結構古い。
室内の写真を撮れば、
自縛霊や浮遊霊の1つや2つは写るかも知れない。
松葉杖も同様だ。
古い松葉杖の場合、
それを使っていた人が将来を悲観して
自殺しているかもしれないし、
階段を松葉杖で上っているときに滑って転げ落ちて
そのまま死んでいる可能性は十分考えられる。
そして、そのうち、
その松葉杖を使う者は必ず死ぬ
という 、「呪いの松葉杖」となるのだ。
夜な夜な松葉杖から聞こえる女性のすすり泣き声。
く、苦しい〜。だ、誰か助けて〜。。。
松葉杖の木目に人のような顔が浮き出てきて、
その表情が毎日変わる。。。
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と言うわけで、やはり、新品の松葉杖は
私の気持ちを安心させ、と同時にウキウキさせた。
「まずは、見本を見せてあげるからよく見ててね。 」
その、理学療法士は、
松葉杖の持ち方、
松葉杖を持った基本的な歩き方
を実演とともに丁寧に説明してくれた。
「理屈では分かっても、やってみないと分からないな〜」
そう思いながらも、一通りの説明が終わるまでじっと待った。
「じゃあ、実際にやってみようか〜。」
「あんよは、じょうず。あんよはじょうず。」
さすが、このかけ声は無かったが、
やっていることは、まさに、赤ちゃんの立ち歩きと同じ状況だ。
なんか、竹馬に乗っているみたいだな〜。
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「じゃあ、次に階段上り下りの練習をしま〜す。
上り階段の場合は、
まず、2本の松葉杖だけで体を支えて、
その瞬間に、怪我していない方の足をひょいって
上の段に載せるんですよ。
その足に体重を載せて重心が安定したら、
すぐに、2本の松葉杖を同じ段に置く。
これを繰り返して行けばいいんです。
まあ、慣れれば簡単だから。 」
そりゃあ、どんなことでも、慣れれば簡単でしょうけどねぇ〜。
上り階段か。。。
これは、マジで恐いな。
「そんな怖がること無いんですよ。
決して、後ろに倒れたりしないから、大丈夫。」
「そんな事は無いだろう!
後ろに重心をかければ当然後ろに倒れる。
これ位、物理を習っていない中学生でもわかるぞ。」
私は、恐怖を感じながらも、
落ちそうになったら、この理学療法士が支えてくれるだろうと
階段を1つ1つ上って行った。
といっても、わずか5段しか無い階段だ。
すぐに制覇できて当然だ。
これが駅の階段だったらぞっとする。
そう言えば、通勤途中の駅の階段、
上りエスカレーターが付いてなかったらどうしよう。
「じゃあ、次に下り階段ですね。
下り階段の場合は、
まず、2本の松葉杖をすぐ下の段に置いて、
その2本の松葉杖だけで体を支えて、
その瞬間に、怪我していない方の足をひょいって
下の段に載せて下さい。
この要領で、繰り返して行けばいいんです。」
こっちは、上り階段より簡単にこなせた。
ただ、もし、前につんのめってバランス崩したら、
顔から真っ逆さまに階段を転げ落ちるはずだ。
きっと、顔面が砕け散って誰だか見分けがつかなくなるな。
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本当は、もっと練習したかったが、
理学療法士は次の人が待っているので、
もう、追い出したがっている様子だった。
それにしても、わずか5段の階段を1往復しただけで、
身に付く訳がない。
あとは、実践で身につけろ!
ってことか。
もし、駅の階段から落ちて怪我したら、絶対恨んでやるっ!
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さて、この私に与えられた松葉杖だが、
当然、無料ではない。
1日100円のレンタルだ。
ただし、60日以上借りた場合は、6000円以上にはならない。
最初に前払い金として6000円支払い、
松葉杖を返却した時に、レンタル日数を計算して、
差額を返す仕組みだ。
レンタル日数≦60の場合
返却金額=6000−100×レンタル日数
レンタル日数≧61の場合
返却金額=0
なお、購入する場合は、6000円で新品を使うことができる。
ということは、61日以上借りた場合は、
返さなくて良いということなのだろうか?
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病院の会計窓口で、診察費・治療費と松葉杖代金を支払い、
私は病院を出た。
いい大人が、慣れない松葉杖でよろよろしながら歩く姿は、
はたから見ればかなり滑稽だったのではないだろうか?
病院の前の大通りに出てタクシーが来ないか1分程待ったが、
来る様子が無かったので、とりあえず歩くことにした。
せっかくだから練習をかねて
タクシーが通りまで、この道沿いを松葉杖で歩いて行こう、
などと甘い考えを持っていたのだが、
30mも進んだだけで、既に息が上がってしまった。
松葉杖はこんなに疲れるものだったのか。。。
私の母親が10年以上昔に、アキレス腱を切った時に、
松葉杖を3ヶ月ほどついていたが、
結構、つらかったんだろうな。
今になって、母親の当時の気持ちが分かったような気がする。
後ろを振り返ると、病院の手前近くまで
タクシーが近づいてきているのが目に入った。
私は、松葉杖を高く持ち上げ振った。
タクシーは病院を通り過ぎて、私の横で止まった。
「お客さん、病院の近くまで来た時、
向こうに歩いて行くお客さんの姿が見えて、
何となく私を呼びそうな気がしましたよ。」
このタクシー運転手は、
自分も若い頃、交通事故で足を怪我して
手術などで1年間歩けなかった事を話し出した。
普段なら、どうでもいいと感じるような、
聞き流してしまう話題だったが、
さすがに今回は、自分の身にも関係あるせいか、
運転手と意気投合して、盛り上がってしまった。
今日は、疲れた。
早く家に帰りたい。
帰ったら、とりあえず寝よう。
おっと、その前に会社にも連絡しておこう。
骨折、全治4週間で松葉杖だから、
明日からしばらくは、時差出勤だと。
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<松葉杖の購入できるサイト>
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カラー木製松葉杖(1組2本) |
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松葉杖自在石突付(2本) |
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流音弥
2002年3月22日










