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骨折童話:アリとキリギリス

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物資(ぶっし)

 もの。人間の生活のささえとなるような物。食料や衣料など。
                           (大辞林第二版より)

 (経済活動の面から見た)品物。もの。(広辞苑 第五版より)

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人が生命活動を維持し、なおかつ、
人間らしい生活を送るためには、
水と食料、衣料、生活品、娯楽品などが必要である。

ただ単に、生命活動を維持するだけであれば、
水と食料だけあればいい。

だが、人としての尊厳と誇りを維持して行くには、
それ以外の様々な物資が不可欠である。

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骨折はしたものの、私の場合は、まだ恵まれている方だ。

テレビ番組の「サバイバー」の様に
「オーストラリア」や「無人島」に放りだされた訳ではないからだ。

私のアパートメントには、
生活物資はある程度そろっている。
衣料はもちろん、書籍、CD、テレビ、
インターネットに接続できるパソコン、
その他生活用品。

水も水道の蛇口をひねればいくらでも出てくる。
もちろん、水道と言えども生水は危険だが、
いったん沸かしてから飲めばいい。
つまり、水は無尽蔵だと言える。

部屋の室温も、エアコンが付いているので、
快適な温度で暮らすことができる。

もちろん、電気が通っているので、
部屋の電灯をつけることによって、
明るい環境で暮らすことができる。

家庭用電話もひいてあり、
携帯電話もなぜか2つ持っている。
もし、本当に危ない状況になったら、
友人、田舎の家族、会社の同僚など、
とにかく、誰かに助けを求めることもできる。

やや大きめの冷蔵庫もあり、当然冷凍室も付いている。

ガスレンジも一昨年買ったばかりのがある。
学生の頃から自炊していたので、
料理しようと思えば、大抵の料理は作ることができる。

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だが、これだけ、恵まれている環境であっても、
骨折した時、私の部屋には、肝心な物が不足していた。

食料だ。
ちょっと乱暴な表現だと、「食い物」「メシ」だ。
ちょっと上品な表現だと、「食べ物」「おまんま」とも言う。

骨折した時、
私の部屋には食料がわずかしかなかったのだ。

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以前、アルバイトで生計を立てていた時は、
非常に生活が苦しかったが、いつお金が無くなっても、
しばらくは生き延びることが出来るように、
非常食」を蓄えておいたものだ。

まるで、グリム童話の「アリとキリギリス」の「アリ」の様に。

ところが、その後、多少生活にゆとりが出来ると、
逆に「非常食」の蓄えは次第に少なくなってきた。
食べる物が無くなったら買いに行けばいいや
という、キリギリス的な慢心と油断と安心感によって、
「非常食」の必要性を感じなくなってきていた。

冷蔵庫の中身が無くなっても、
部屋から出てスーパーに買い出しに行くのが
面倒くさい時や、時間が無い時などに、
「非常食」を少しずつ食べてしまった。

いつまでも古いままの食料を保存しておくと、
賞味期限が過ぎて味が落ちてしまう。
それならば、古い「非常食」から食べていき、

食べた分だけ、新しい「非常食」を補充した方が
合理的だとも考えた。

もちろん、
食べた分だけ後で補充しておけば問題は無かったのだが、
実際は、「非常食」を買いに行くのが面倒くさくて、
結局、「非常食」の量は減る一方だった。

そして、「非常食」が無いと、
いざと言う時にどれだけ不便であるか、
今回の骨折によって痛いほど思い知らされることになった。

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骨折したのが土曜日の夜である。

日曜日は、痛みで動けず、家から一歩も出られない。

食べ物は、部屋には殆ど無い。
だからといって、飢え死にする訳にもいかないので、
ピザを頼むことにした。

宅配ピザ以外に、
ケンタッキー、スパゲティ、カレーのデリバリー、
寿司や定食類の出前を注文するという選択枝もあったが、
普段から頼みなれているピザを頼むことにした。

宅配ピザのサイズは、
M(直径20センチ位)とL(直径30センチ位)の2種類があるが
Mサイズでも、1人で2食分にはなる。

2500円のピザならば、
1食1250円というちょっと高めの食事にはなるが、
それでも、払えないほどでもない。

毎日、宅配ピザ屋出前を頼めば、
かなり高い食費となることが予想されるが、
4週間で治るのであれば、
一時的な緊急処置として許されても良いだろう。

もちろん、20代の貧乏アルバイト生活時のように、
食費を切りつめなければ生活できず、
貯金も殆ど無い場合ならば、
宅配ピザや出前を頼む事自体が論外であり、
この様な贅沢は決して許されないことである。

1日の食費を2500円とすると一週間では、13500円。
一日当たりの食費が500円だった、
私の一番貧しかった時期であれば、
なんと、27日間分の食費に該当する。

デリバリーを頼めるのも、
たまたま、独身貴族の身だからで、
もし、失業中であれば、絶対にできないことである。

失業中の方、リストラされそうな方、もしくは、
若くて給与が少なくてお困りの方は、
絶対に、骨折したり病気になったりしないように、
普段から細心の注意を払った方がいい。

怪我や病気こそが最大の浪費なのだ。

しかも、ただ浪費するだけでなく、
収入を得る手段さえ奪ってしまいかねない。

考えてみれば、こういう非常事態に備えて、
人はせっせと貯金に励むのだろう。
そして「非常食」を蓄えておくのだろう。

グリム童話の「アリとキリギリス」の「アリ」のように。

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流音弥
2002年3月23日

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