無神経な乗客達
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松葉杖で電車通勤していると、
時々、私の様な怪我人に対して、
無神経な行動・態度をする乗客に遭遇する。
ある日の事だ。
私は、優先席の出入り口側の席に座っていると、
ある大きな駅で乗客がぞろぞろ乗ってきた。
その40歳前後の男性サラリーマンは私の前に立ち、
新聞を広げて読み始めた。
しばらくすると、私は、右足に鋭い激痛を感じた。
一体なんだろう?
思わず私は足元を確認すると、
なんと彼の足が、私が骨折している右足に密着していて、
電車の揺れとともに、押して来ているのだった。
私は、足を大きく投げ出していた訳でなく、
普通に下に下ろしていただけだった。
私がギプスをしていることは、
白い包帯でぐるぐる巻きにされた足を見れば一目瞭然であり、
それ以前に、私が松葉杖を手に持っていることを見れば、
分からないはずが無かった。
松葉杖が目に入らなかったのだろうか?
そんなことは無いだろう。
新聞のような細かい字が読めて、
松葉杖が見えないということがあるだろうか?
松葉杖を使っている人間は足を怪我している
ということは、
普通に社会で生活してきた人間であれば、
常識的知識のはずだ。
足を怪我した人の足に対して当たらないように注意するのも
社会人、いや、人として当然の気配りであり、思いやりだろう。
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1.松葉杖を持っていれば、おそらく足を怪我していること。
2.足を怪我をしている人の足に近づけば、
足にぶつかったり、踏んだりする可能性があること。
3.足を怪我している人の足にぶつかったり、踏んだりしたら、
その人は、痛みを感じること。
結局、これらの基本的なことに気が付けないのは、
他人に対する想像力が欠如している
からではないだろうか?
他人に対する想像力が欠如している者が
最近増えてきている理由は、
想像力(他人を思いやる気持ち)をはぐくむ教育を
学校が、親が、地域社会が行って来なかったからだ。
もし、こういうことをしたら、
この人はどう感じるだろう?
不快に思わないだろうか?
苦痛を感じないだろうか?
若者による暴行殺人事件が続発しているが、
それらも、全て根っこは同じ所にあるのだ。
常に相手の気持ちを考えて行動することは、
時には、自分のやりたいことを
我慢しなければならないかもしれない。
だが、相手が嫌がることを無視してまで実行することに
一体どんな価値があるだろう?
優先席に座った若者が、
目の前に老人や怪我人や妊婦が立ってても
席を譲ろうとはしない。
譲るのはむしろ、年輩の女性や男性だったりする。
普通席ならまだ諦めるが、
(本当は、諦めるという事自体がおかしいのだが)
優先席でもそうならば、実にやりきれない社会である。
私は、それを実感するのが恐ろしいので、
必ず、優先席のある車両に乗ることにしている。
今のところ、優先席に座っていた健康な乗客のうち、
必ず誰かがすぐに立って、席を譲ってくれている。
だが、若者と年輩の人が座っていた場合、
大抵席を譲ってくれるのは、年輩の人の方だ。
年輩の人は、自分が年をとるにつれて、
体力が衰え、体が弱くなってきていることを
実感しているからこそ、
他の弱者に対する想像力が働くのだろう。
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さて、私の骨折している足を靴で押してきた
先ほどのサラリーマンに対して、
私は、思わず、「痛い!」とつぶやいたが、
そのサラリーマンには聞こえなかったようだ。
「済みません」の一言もない。
淡々と新聞を読み続けた。
もしかしたら、聞こえない振りをしているのかもしれない。
また、弱者をいじめることに対して
快感を覚えるタイプなのかもしれない。
私は、松葉杖で殴り倒してやろうかとも考えたが、
そこは、一応、怪我人ということで我慢した。
まず、この男を私の足に近寄らせないことが先決だ。
それまで、私の両足の間に挟んでいた松葉杖を
私の怪我をした方の足の前に置き直した。
その時に、その男の足に松葉杖がぶつかったが、
こちらも知らない振りをした。
さすがに、その男は足を引っこめ、
私と多少距離の離れたポジションに身を引いた。
おい、最初からそうしていればいいんだよ!
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翌日、今度は私は、優先席の一番奥に座っていた。
私の隣の席が空いた。
私の前に立っていた若い男性が隣の席に座ろうと、
私の前を横切った。
横切る瞬間に彼の靴が私の骨折した足にぶつかった。
当然、私の足には激痛が走る。
彼はちっとも気が付いていない様子だ。
私は、一番奥の席だったので、安心しきって、
松葉杖によるバリアを張るのを忘れていたのだった。
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流音弥
2002年3月27日







