優先席は誰の為?
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数日前の事だ、
駅のホームの時計の針は22時を指していた。
こんな遅い時間ならば電車は空き始めているに違い無い。
私は骨折した後は、松葉杖の為、
ラッシュの時間をずらして遅めに出社していた。
その日も、1日の所定時間7.5時間を超えて働き終えて
ヘトヘトになって帰宅するところだった。
すぐに電車がやってきた。
満員電車だ。
私の淡い期待は見事に裏切られた。
一本電車を後らせることにした。
すぐに次の電車がやってきた。
電車の間隔が短いのが山手線の唯一の長所だろう。
だが次の電車も満員だった。
この電車に、一体どうやって乗れというのだ。
仕方なくもう一本遅らすことにした。
次に来た電車も、多少混んではいたが
私が乗り込むスペースがわずかであったが、何とかあった。
これ以上待ってみても、空いている電車は来そうに無い。
おそらく、3月の最後の週なので、
会社の送別会などで混んでいるのだろう。
ここで妥協するしかない。
だが私の30分間の地獄はこの瞬間から始まったのである。
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私が乗った車両は優先席のある車両で
しかも、私が乗ったのは、優先席の直ぐ近くのドアだった。
私は、いつも、優先席への最短距離にあるドアから
乗るようにしている。
優先席であれば、
足を怪我した私に席を譲ってくれる確率が多いだろう。
いや、多いかどうかという問題ではなく、
当然、譲ってくれるだろう。
という甘い期待があるからだ。
あいにく優先席の6席(3席×2列)は
健常者によって占領されていた。
優先席の前の吊革にも健常者がしがみついていた。
さらに、その周囲にまで何人もの健常者が
人の壁を作っており、
私は、優先席には全く近づくことができなかった。
次の大きなターミナル駅で乗客が入れ替わるまでの15分間、
私は、2本の松葉杖と左足のみで
立ち続けなければならなかった。
この姿勢を長時間続けることがいかに疲れることか、
松葉杖を使ったことのある人にしか分からないだろう。
15分間、私に対して誰一人声をかけることはなく、
私は、汗を垂らしながら、ひたすら時間が経つのを待った。
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大きなターミナル駅に着くと、大勢の乗客が下車した。
私は優先席が空かないだろうかと優先席の方を探った。
2つほど優先席が空いたが、
そこには、それまでその前の吊革につかまっていた健常人が
あっという間に、座ってしまった。
優先席の前の吊革は空いたので、
私が松葉杖でピョンピョン跳ねて行き、
一番隅の優先席の前に立った。
ここならば、車両と車両の間のドアに寄りかかることができる。
それが、私の唯一の慰めだった。
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たどり着いた列の優先席に座っていたのは、
40代とおぼしきスーツ姿の男性サラリーマン、
25歳前後の若者(フリーターだろうか?)、
40代の中年の女性(会社勤めっぽい)
どうみても、健常者としか思えない3人だった。
私が来るまで、確かに目が開いていたにも関わらず、
この3人はいつの間にか、眠りに落ちていた。
40代のサラリーマンはさっきまで
新聞を広げて読んでいたはずなのだが。
こっ、これが、噂に聞く、タヌキ寝入りか〜?
私も時々、優先席に座ることは、これまであったが、
その場合、優先者が来たらすぐに席を譲っていたし、
優先席でない席に座っていたとしても、
松葉杖を使っているような怪我人や
妊娠している人、
65歳を超えているような老人、
今にも死ぬのではないかと思えるような弱々しい老人には、
すぐに席を譲っていたぞ!
それに、タヌキ寝入りもしなかった。
結局、そこからさらに、私の乗車駅までの10分間を、
吊革につかまり、かつ、両間のドアに体を寄りかからせて
耐えなければならなかった。
タヌキ寝入りの若者は、
駅に止まる毎に、時々目を覚ましては、
窓の外を確認していたが、
私の事は気が付かなかった(振りをした)。
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結局、トータルで25分間の間、
松葉杖と左足だけで立ち続けたことになる。
左足は、しまいにしびれて感覚が無くなってしまった。
JR山手線の車内放送では、この25分の間、
1回も、優先席についてのアナウンスは無かった。
一方、携帯電話の使用に対する注意のアナウンスが
何度か流れた。
「携帯電話のご使用は他のお客様の迷惑となりますので、
ご遠慮下さい。」
健常者による優先席の使用は、優先者にとって迷惑じゃない
とでもJR東日本は思っているのだろうか?
それとも、
優先席を健常者が占有していることを知らないのだろうか?
優先席を設置しても、それが十分に機能していなければ、
設置した意味がないじゃないか!
優先席に優先者が座れるように保証することも、
鉄道会社の義務ではないだろうか?
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優先席 Priority Seat
おゆずり下さい。
この席を必要としているお客さまがいます。
●乳幼児をお連れの方
●妊娠している方
●お年寄りの方
●からだの不自由な方
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優先席の後ろの窓に貼ってあるこのステッカーの文字を
これ程恨めしく思ったことは無い。
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流音弥
2002年3月30日







