10) 牛肉を大いに食べる会
ああ、やっぱりやったか〜。
日本の政治家は相変わらず発想がワンパターンだ。
日本初の狂牛病の感染が確認されたことから、
牛肉の売り上げや焼き肉店の客足が減るなど
風評被害が広がっている。
これらをなんとか防ごうと、
感染牛を飼育していた北海道や千葉県選出の
与党3党の衆院議員有志が中心となって、
10月2日、憲政記念館(東京都内)で
「牛肉を大いに食べる会」を開いた。
例によって議員らが、実際に牛肉を食べて見せて、
牛肉の安全性をPRしようという趣旨だった。
食べる会には
武部勤 農水相、
坂口力 厚生労働相
自民党の山崎拓 幹事長
公明党の神崎武法 代表
をはじめ与党幹部ら百数十人
(200人という新聞記事もある)が出席したという。
感染が確認された千葉県や感染牛が生まれた北海道から
取り寄せた牛肉を調理したステーキやすき焼きなどを味わった。
この日の会で消費した牛肉は、計約60キログラムというから、
一人当たり、300グラムという計算になる。
300グラムの牛肉というのは結構な量だ。
若者でさえ、300グラムのステーキを食べきるのは
並大抵のことではない。
中高年ばかりの政治家が
本当に一人300グラムも食べたのかを考えると
この数字は結構疑わしいものがある。
まあ、それはともかく、
そう言えば、こういう光景、
どこかで見たことあるな〜と思ったら、
確か、だいぶ以前に管直人(現民主党代表)が
厚生大臣の時にやった「カイワレ・パフォーマンス」。
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1996年、病原性大腸菌「0−157」による
大阪府堺市の小学校集団食中毒の感染源の
調査を進めていた厚生省は同年8月7日に
「カイワレ大根が原因食材である可能性も否定できない」
と発表した。
この発表のため、「カイワレ大根危険説」がはびこり、
カイワレ大根は全く売れなくなり、
スーパーや八百屋から姿を消し、
カイワレ生産業者は大パニックに陥った。
カイワレ業者の窮地を救うため、
(おそらく、カイワレ業者から強烈な懇願と圧力があったはずだ)
当時の管直人厚相は
カメラの前でカイワレ大根を口一杯にほおばって
しかも、3皿もお代わりして食べて見せたが、
結局、パフォーマンスの効き目は薄かった。
なぜなら、視聴者は皆、
それらのカイワレ大根が大臣試食用に
厳重な品質管理及びチェックを経ており
当然、食べても絶対に安全であることを知っていたからだ。
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あと、最近で言えば、
埼玉県所沢市のダイオキシン汚染が問題になった時だ。
テレビ朝日の人気ニュース番組である、
ニュースステーションにおける、
「所沢の野菜のダイオキシン汚染濃度」の発表が発端だった。
このときは、所沢産ほうれん草が売れなくなった。
もちろん、ほうれん草以外の所沢産の野菜も市場から消えた。
1999年の2月19日、
小渕総理以下、閣僚が揃って所沢産ホウレン草を食べる
パフォーマンスをした。
当然、国民はオバカではないので、効果は無かった。
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さて、今回の「牛肉を大いに食べる会」。
何と言っても名前がしゃれている。
ただ単に、「牛肉を食べる会」ではなく、「大いに」が付くのだ。
それを考えれば、
一人当たり300グラムを食べきったのが事実であるとすれば、
会の名前通り、「大いに」食べたと言えるかも知れない。
だが、私はこの牛肉パフォーマンスには
3つの欠点があることを指摘したい。
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まず第1に、
先のカイワレパフォーマンス同様、
この牛肉が完全な管理のもと、
良質のエサと環境で育てられた、
絶対に狂牛病にかかっているはずの無い
高級牛であったからだ。
日本の政治を司る国会議員に
狂牛病に汚染された可能性のある牛肉を
わざわざ食べさせる訳にはいかない。
狂牛病にかかるはずのない高級牛に対して、
日本で最高の検査施設と検査技師による
狂牛病チェックがされた後、
「牛肉を大いに食べる会」の食卓に上ったはずだ。
これでは、いくら、千葉産、北海道産の牛肉を取り寄せても
それらの安全性を証明することはできない。
本来ならば、千葉産、北海道産の
しかも普通のスーパーで買ってきた安い値段の牛肉を
食べて見せるべきなのだ。
おそらく、危険度としては、
狂牛病感染の可能性は高まるはずだ。
その可能性自体は若干であると思われるが、
完全飼育の高級牛に比べたら雲泥の差である。
それでも、議員達は食べるだけの
勇気を持ち合わせているのだろうか?
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第2に、
仮に議員達が食べた牛肉が狂牛病で汚染されていたとしても
それがわかるのは、彼らが狂牛病
正確には、新変異型クロイツフェルトヤコブ病を発症してからだ。
そもそも、プリオン病は潜伏期間が何年にも渡るので、
発症を待っているようでは、安全性の証明にならないと言える。
要するに、
O−157の様に即効的に発病する病気ならともかく、
狂牛病の場合は、牛肉パフォーマンス自体が無意味なのだ。
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第3に、
今回、議員達が食べた牛肉は、
本来安全だと言われる「肉」の部分だ。
安全な箇所を食べれば当然、安全に違いない。
むしろ、脳や内臓(モツ、ホルモンと呼ばれる部分)、
骨髄などの部分を食べて欲しかった。
ここまで危険を冒してこそ、真のパフォーマンスになるのだ。
どうせ、「牛肉をおおいに食べる会」で食べる牛肉は、
狂牛病に感染するはずのない完全管理の高級牛、
しかも、日本最高スタッフによる検査済みの牛肉なのだから、
安心して、あらゆる箇所の「肉」を食べてもいいはずだ。
私が国会議員だったら、そこまでやって、「男」を上げるのだが。。。
もっとも、私は、群れるのが大嫌いなので、
どっかのテレビ番組と提携して、一人で出演するだろう。
だいぶ昔になるが、テレビ番組で、
ゲストが何から食べるか当てる番組があったが
そういうのでもいいし、
いっそのこと、「食いしん坊ばんざい」で
「牛つくし編」を企画してみるのも面白いだろう。
「料理の鉄人」を復活させて、
牛の内臓と脳と脊髄(骨髄)をふんだんに使った料理を、
和食、中華、フランス料理、イタリア料理などで競わせる。
牛を丸ごと運んできて、
食材選び、そして それを解体するところから始める。
運と腕が悪ければ、
解体途中で、脳や脊髄から吹き出た血によって
牛肉自体もプリオンに汚染されたりする可能性がある。
これらの肉を用いた料理を、ゲストとして試食するのは、
案外スリルがあって刺激的だ。
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さて、「牛肉を大いに食べる会」だが、
牛乳で乾杯して安全性をアピールしたというが、
牛乳については、安全であることがわかっているので、
いまさらという感がぬぐえない。
いっそのこと、「骨髄スープ」で乾杯して欲しかった。
たっぷり、骨の髄からエキスを絞り出したスープ。
狂牛病に感染してたらひとたまりもない。
でも、安全なのでしょう?
だから、パフォーマンスして見せているんでしょう?
だったら、そこまでやらなくちゃ!
それとも、牛肉は安全だけど
内臓や脳は安全でないとでも言うのだろうか?
内臓や脳が安全でない
→狂牛病に汚染されている牛がある
→牛肉の部分も解体途中で汚染される可能性がある
→牛肉も結局安全ではない
つまり、ALL OR NOTHING
牛肉のうち、どこか一部分でも危険な部分があれば、
それは、全ての部分が危険なのだ。
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なお、小泉首相は、
政府の対応に区切りがついていないとして
参加を見合わせたという。
さすが、小泉首相だ。
この会の無意味さを理解している。
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なお、余談になるが、10月17日
小泉首相は、
狂牛病問題で首相官邸を訪ねた武部農水相らに
「パフォーマンスよりも、
しっかりした不安のない正確な情報を提供してほしい」
と指示したという。
「牛肉を大いに食べる会」で牛肉の安全性をアピールした後に、
10月12日、東京都で狂牛病騒動が起こり、
対応が混乱したことへの不満からなのだろう。
それにしても、小泉首相は冷静でいて大変結構なことだ。
もし、小泉首相が「牛肉を大いに食べる会」に参加していたら、
絶対に人気を落としていただろう。
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流音弥
2001年10月23日







